美瑛町の観光戦略の「手段」と「目的」を再定義して、持続的な発展を目指すべきである。観光資源の「青い池」、「美しい景観」、「豊かな農産物」などで「丘のまちびえい」は全国ブランドに育った。いまや、美瑛を知り、訪れてもらう目的は達成しつつある。しかし、観光資源はビジネス戦略的には「手段」に過ぎないから、そのお宝で基幹産業として何を得るのか、新たな「目的」を打ち立てる時がきた。それは、商店街にとどまらず町全体の経済を循環させ、雇用を生むことではないか。それには、「観光客のニーズを知る」「競争相手の実力を知る」「己の弱点を補い・強みを活かす」など戦略プロセスの基本に立ちかえることである。そのために、本稿ではまず基礎データの分析を行う。
1.月別の変化の傾向をつかむ
下のグラフは、H26の入込総数と宿泊延数を重ねあわせて月ごとに表示したものを、左から美瑛・富良野・旭川・ニセコの順にならべたものである(グラフはクリックすると拡大表示、旭川は縦軸が2倍)。
美瑛が課題としている冬の観光振興に着目すると、成功しているモデルはニセコと富良野である。
美瑛と旭川は極端な夏偏重型である。美瑛は、青い池ライトアップで1月の入込数が急増したが、宿泊は増えていない。旭川は、2月の冬まつりと旭山動物園イベントが宿泊延数を少し増やしてる。
2.競合との比較
下のグラフは左に、H26の入込総数を月別に美瑛・富良野・旭川・ニセコで比較したもの、右におなじ比較を宿泊延数について行ったものである(グラフはクリックすると拡大表示、縦軸は左右で異なる)。 なお、美瑛・富良野・ニセコは年間の入込総数では160~180万人と並んでいる(H26、ブログ第15報)。
夏の宿泊で、美瑛は旭川と富良野に大きく離されている。これは、収容能力の差か、集客力の差か?
冬の宿泊で、美瑛は富良野と旭川にさらに大きく離されている。これは、休業が多いのか?集客力の差か?
3.鍵となる月の変化( H22→H26)
下のグラフは左に、ある月の入込総数を年度別に美瑛・富良野・旭川・ニセコで比較したもの、右に同じ比較を宿泊延数について行ったものである(グラフはクリックすると拡大表示、縦軸は左右で異なる)。
7月は、5年のあいだ旭川・富良野が入込で横ばいか少し減らすも、宿泊は大きく伸ばしている。美瑛は、入込が増えても宿泊は伸びず、好ましくない。これは、収容能力の差か、集客力の差か?
統計的には、美瑛の入込総数がH23から増えると、富良野・旭川の宿泊が伸びる相関関係となる。この意味は、美瑛で昼に集客した人が、夜には富良野・旭川に移動したという見方もできる。
1月は、5年のあいだ旭川・富良野が入込で横ばいだが、宿泊は伸ばしている。 美瑛は、H26の1月の青い池のライトアップで入込が急増するも宿泊は変化なし、2月も低迷、好ましくない。これは、休業が多いのか?集客力の差か?
まとめ 上記データから読み取れる範囲で戦略プロセスの3要素の課題をまとめると次のようになる。
「観光客のニーズを知る」 美瑛は入込数が増えても、付加価値の大きい宿泊が増えないのは、「観光客のニーズに合っていないから」と仮説をたてて検証する必要がある。
「競争相手の実力を知る」 富良野と旭川という強力なライバルを意識する必要がある。いまは、青い池で集客して、夜に流出して宿泊のおいしいところをとられている構図ではないか。
「己の弱点を補い・強みを活かす」 強みは、「丘のまちびえい」そのもので、競争相手を十分差別化しうる資源がある。 弱みは、強みを活かした多様な観光パッケージ、つまり「景観」「グルメ」「体験」「リゾート」「ショッピング」「おもてなし・お泊り」の組み合わせて富良野や旭川に対抗するメニューの企画力が弱い。
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参考文献 北海道の観光入込客数の推移 →資料へ
第5回北海道観光産業経済効果調査 →資料
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