5月10日の議会(美瑛町第二回臨時会)の議長選は、3氏が議会改革(※)を主張しにわかに改革の様相を呈しました。望ましい動きです。町民主体の町政改革を進める角和町政に対し周回遅れでもあり、本丸を外さず果敢に挑戦してほしいとの想いです。
※所信表明の関連情報を末尾の参考資料に掲載しています。
なぜ今、議会改革なのか?・・WHY
ひとつは町民生活に絡む問題解決力をつけるためです。
人口減少のなかで町政(行政と議会)が取り組む課題は、町民抜きでは進められません。福祉や産業、町民サービスの予算に限りがあって、町民の理解を得て優先順位を絞り込む必要があります。
ところがこういった町民生活に密接に絡む課題ほど、問題の把握と町民意見の集約が難しいものです。そこで議会(議員)が、町民と行政(町長)の間にたって調整することが重要です。
もう一つは過去から蓄積した慢性的な問題の根本解決のためです。
町内産業の「漏れ穴分析(※1)」や「ひび割れ分析(※2)」が示した衝撃的な結果は、この町の将来の大きな不安要素となっています。
こうなってしまったのも、本来は行政(町長)に対し強い権限(※3)を持つ議会が解決に向けて動かなかった結果であり、一定程度の責任があるということです。
慢性的な問題の治療には利害関係者の理解と調整が必要で、町民を代表する議会がその役割にふさわしいからです。
(※1)漏れ穴分析(第6次美瑛町総合計画、P.12)
町内産業が町内の需要を賄える生産が十分にできていないとの調査がでました。2021年度の調査(産業連関表)で、町内生産額の44%しか自給できていないとの推定があります。
(※2)ひび割れ分析(第6次美瑛町総合計画、P.13)
町内産業の「ひび」とは、後継者がいないために事業所が撤退・廃業し地域からなくなる予兆です。2021年度に調査した町内事業所の生産額327億円のうち、将来的に50%が消失すると推定されています。
(※3)議会は法律的に、行政(町長)のつくった予算と条例の議案を承認する権限を持っています。また、修正したり否決する権限も持っています。
議会改革って何?・・WHAT
ひと言で、町政に対する議会の問題解決力を高めるためのアクションのことです。
町民生活に絡む問題は、たとえば市街地の除雪の問題は毎年のように議会で議論されます。問題の根っこを追求しないので、毎年のようにやり取りを繰り返しています。
過去から蓄積した慢性的な問題は、先ほどの「漏れ穴分析」や「ひび割れ分析」のほかに、観光客のマナー、美瑛高校の問題、JRの存続など、目立った改善がないのに議会が毎年予算を承認し、行政が執行する、この繰り返しです。
さらに悪いことにこういった積みあがった問題を、持続的なまちづくりのリスクと課題と称して体系化して総合計画に書きます。わたしの知る限り、総合計画にあげた慢性的な問題が解決したことは町政の歴史でありません。
こう突き詰めると、町政の問題を解決できる組織体になるための一連のアクションを、議会改革と呼ぶのではないでしょうか。
議会改革を進めるステップとは・・HOW
議会改革は、やれることからか始めるのではなく、問題解決力を高めるためのボトルネックに向き合わないといけないと考えます。
第一ステップは、町民生活に絡む問題と、過去から蓄積した慢性的な問題の解決を妨げていたボトルネック(制約条件)はなにか具体的に把握します。ちなみに、自治基本条例にその答えはありません。
第二ステップは、特定したボトルネックを、新しいシステムに改革することで制約が制約でなくなることを考えます。組織を変えたり、核心的な技術を導入することもあります。これらはイノベーションと呼ぶこともできます。
第三ステップは、アクションプランとPDCAとなります。ここまでが難しく、ここからは易しいです。
第一ステップと第二ステップは仮説思考と期待効果と決断の世界です。切迫しないとできないものです。しかしこれをスキップして第三ステップから始めると、たいていは効果がありません。
要は最も困難なところに向き合わないと改革にならないのです。
つぎに第一ステップと第二ステップのボトルネックを見つける事例を考えます。
下図は、令和4年度から令和6年度の3年の会計年度について、決算と予算編成と予算審議のつながり示しています。ここで、問題解決を制約しているものを見つけます。
令和4年度の決算(A)は、令和5年9月の議会で認定します。
令和4年度の決算(A)の評価結果は、令和5年度予算の予算編成(B)と予算審議(C)には間に合いません。
令和4年度の決算(A)の評価結果は、令和6年度の予算編成(D)に反映しようと思えば間に合います。
しかし(A)から(D)までの2か月余りの間に議会が町民と情報共有して、町民参加で意見を募り、政策として反映することはかなり難しいと思われます。ただし、議会と行政の間の政策の折衝を行い、その結果を町民に報告することはできると思います。
このケースでは、単年度決算の評価結果を次年度の予算編成に反映できないことが問題解決のボトルネックでした。決算をもとに町民参加や政策提言を行って、次の予算に反映することがシステムの制約があってできません。
しかし次年度にこだわらず、次々年度の予算編成に反映するシステムとすれば制約だったものが制約でなくなります。よって町民の求める問題解決の可能性が出てきます。
この事例を一般化すると
議会改革とは(WHAT)=問題解決力を高める
議会改革のステップとは(HOW)=ボトルネックを見つけシステム変更で回避する
議会改革の先進地のモデルケース
(政策形成過程等)第12条 議会は、町長等が提案する重要な政策等の意思決定においては、その水準を高めるため、次に掲げる政策形成過程を論点として審議します。
(1) 政策等の発生源
(2) 検討した他の政策等の内容
(3) 他の自治体の類似する政策等との比較検討
(4) 総合計画の実行計画及び個別計画における根拠又は位置付け
(5) 関係ある法令及び条例等
(6) 政策等の実施に関わる財源措置
(7) 総合計画上の実行計画及び将来にわたる政策等のコスト計算
2023-5-13 Noriaki Gentsu @ NorthQuest
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参考資料
1.議長選立候補者の議会改革に関する所信
2.青田議員の提唱した議会改革の内容が、課題の理解に役立つと思います。論評なしで書きに引用します。
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