2015年にこのブログを始めたきっかけはまちの将来負担の膨張。それから8年余り、町長がが変わってまちの借金が減り、人口の転入増などの変化が見えています。人口減のなか、「残さないといけないもの」と「続けたいだけのもの」を区別できる・・・そういった経営感覚をもったつ若手の町民や町議の出現を期待してこのテーマにしました。
<目次>
1.町の借金(町債)・・大きく減っています
2.将来負担比率(%)の求め方を押さえよう
3.将来負担比率(%)の適正な値は?
4.将来負担を町民1人あたりに直したら見えてくる世界
1.町の借金(町債)・・大きく減っています
図1は12月の広報で報じられた令和4年度(2022)決算です。平成30年度(2018)に比べ、まちの基金(町の貯金)と町債(町の借金)が大きく改善しました。
図2は令和4年度(2022)決算の健全性をあらわす「財政健全化判断比率」です。
3つの比率は政府の決めた早期健全化基準より少なく問題なしです。なかでも将来負担比率27.9%で、前年の41.2%から大きく改善しました。
2.将来負担比率(%)の求め方を押さえよう
つぎに、まちづくりに意欲をもった若者やこんご町議を目指す若いひとのために令和4年度(2022)決算の将来負担比率27.9%の算出をステップごとに確認していきます。
そのまえに、なぜ将来負担比率から始めるのでしょうか?
長期的な町政の良し悪しがこの数字にすべて現れる
将来の世代に残すまちづくり政策を考えるときの基本のものさしとなる
この比率を導くときの数字から、芋づる式に町政の知識を学べる
(A) 将来負担額(143.6億円)
将来この町が支払わないといけない総額です。
町債(町の借金)は、家計で言えば住宅の長期ローンのようなもの。
公営企業(町立病院・水道などの赤字の繰り入れ見込み)、組合(大雪組合などの負担金の繰り入れ見込み)、退職金(職員に支払う見込み)
(B) 充当可能財源等(129.3億円)
将来この町が支払いに充てられると見込める総額です。
基金(町の貯金)
特定歳入(施設の利用料など)
基準財政需要額算入見込額(町債のうち国からの交付が見込めるもの)・・・図1の町債の説明に「町債のおよそ7割は国から交付税を受けられ、町の負担が少なくなる(※)」とあります。
※ <注意>逆に3割は将来の町民の自己負担ということです。役場や議員が「町の負担が少なくなる有利な借入」と説明したときは注意が必要です。自己負担がいくら積みあがるか聞きましょう。自己負担に見合った基金(貯金、引き当て)を工面できるか聞きましょう。
(A)-(B) 将来負担比率の分子(14.3億円)
上記の(A)から(B)を差し引いたものが将来負担比率の分子となります。これが大きいほど将来負担比率も大きくなります。
将来にこの町が支払いに充てる見込みが現時点でついていない金額
将来に予算(町の家計)を削ってその分を分割で支払いに充てなければならない金額
将来負担比率の分子が増えるのはどんな場合か、整理しておきましょう。
毎年の返済より、借入が多いとき
毎年の借り入れの自己負担分を賄えるだけの、基金(町の貯金)や特定歳入(使用料等)が増やせないとき
将来負担の分母(51.1億円)
将来負担比率(%)を求めるための分母です。(このブログでは分母を使わない方向でこの後の検討を進めます)
政府が市町村の特性に合わせて標準的な額を定めたもの。全国の市町村を一律に管理しやすい。
同じ人口でも市町村によって違う
政府の考える変わる・・2015年から2021年にかけアベノミクスで増えた
令和4年度決算の一般会計の、歳入117.3億円や歳出114.8億円とは違う
将来負担比率(27.9%)
以上のような手順を踏んで令和4年度決算における将来負担比率27.9%が求まります。
3.将来負担比率(%)の適正な値は?
図2の将来負担比率の説明に「基準の350%より少なく、現時点で将来への財政負担が少ないことを示している」とあることに留意します。
現時点でとは、将来のある時点の数字を表すものではないという意味です
350%より少ないとは、財政破綻した夕張市のようにステージ4に達したとき初めて発動するという意味です
また次のことも気になります。
将来負担比率は何%まで下げるのがいいかわからない
まちづくり総合計画(p121)は、令和3年度(2021)の将来負担41.2%に対し、令和9年(2027)と令和14年度(2032)が55.0%の達成目標です。10年かけて増える目標になっています。人口が減って将来の町民の負担が増えるという意味です。
要はパーセントだけはわからないことがありそうです。
4.将来負担を町民1人あたりに直したら見えてくる世界
このようにパーセントで見た数字は実感としてわかりにくいです。
そこでわたしは町民が将来負担をもっと身近なものとして考えるため、上記の(A)-(B) 将来負担比率の分子を人口で割ったものを調べてみました。
町民ひとりあたりの将来負担額(2021年度)
図8は、(A)-(B) 将来負担比率の分子の金額を町民ひとりあたりに換算して比較したものです。旭川市を除き、上川振興局管内の人口の多い7町村を選び、データは全部の町村が揃った令和3年度(2021)としました。
クリックで拡大します
ちなみに、(A)-(B) 将来負担比率の分子がマイナスということは、十分に基金をためてあるので将来世代の負担はゼロという意味です。この場合は市町村の資料は将来負担比率(%)は0%でなく、 " ー "と表わしています。
令和3年(2021)に(A)-(B) がマイナスだったまちは・・・・
人口が少ない町村はきちっと貯えている感じです。
中富良野町(-25,021) 美深町(-638,436) 和寒町(-736,519) 剣淵町(-184,746) 愛別町(-88,055) 中川町(-118,188) 幌加内町(-2,195,946) ・・・単位(円)
図8のエクセルデータ(PDF)は
町民ひとりあたりの将来負担額(2015年度)
同様にびえい未来ネットのバックナンバーから、平成27年度(2015)のデータを掲載します。
クリックで拡大します
平成27年度(2015)に(A)-(B) がマイナスだったまちは・・・・
当麻町(-46,010) 美深町(-271,120) 比布町(-81,273) 和寒町(-888,659) 下川町(-715) 剣淵町(-158,816) 中川町(-292,097) 幌加内町(-2,464,241) 音威子府(-555,497) ・・・単位(円)
図9のエクセルデータ(PDF)は
まとめ
図8と図9で見てきた町民1人当たりの将来負担比率の分子を市町村で比べると、パーセントだけでは見えない世界が見えます。人口の少ないまちがたっぷり貯えていることにも驚きます。
町民も、町立病院や水道など維持しなければいけないもの、慣れ親しんだ補助金や公共施設のリストラなど続けたいだけでは済まないことをバランスよく判断する視点が必要になるでしょう。
また、なにか新しい事業を立ち上げるとき、それ以上に他のものを減らす。そういった大局観をもった柔らかい経営感覚の若手リーダーの育成も必要です。
参考資料
この投稿に使った資料はホームページに公開された次のたったふたつです。これは各市町村とも共通です。
ほかにもうひとつ部分的に参照したのは
◆これから町議を目指す若手のために、持続的なまちづくりに重要な公開情報の見つけ方と読み解き方を次回のブログで説明しようと思います。
2023-12-09 Noriaki Gentsu @ NorthQuest
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