あらすじ
地方債(ローン)に関する公開情報によると、美瑛は近隣の町村と比べて突出して将来負担が多い借金体質だ。これから人口減少で財源が減るのでローンも減らしておかないと、将来世代は何かを削って返済する困ったことになる。
論点1 -いまのところローンを減らす動きはないので、人口減少が進むなか将来の財政のやりくりは近隣の町村よりはるかに苦しくなる。
論点2 -いまのまちづくりがもたらすもの、つまりほかの町村より将来リスクを増やしてでも手にいれたい特別な価値または成果とはいったい何か。
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図27-1 地方債(ローン)と将来負担(美瑛町、平成27年度)
市町村は、公共投資(インフラや建物)のため地方債(ローン)で資金調達する。ローンにするのは、将来の世代も使うから支払いを公平にするためだ。
美瑛町の平成27年度の将来負担(A)は193億円で、ほとんどが地方債(ローン)だ。(注1)
ローンの支払い能力となる返済財源(B)は156億円で、国がローン返済のため将来にわたり交付する見込み117億円と、いざというとき取り崩せる基金をあわせたものだ。
正味の将来負担(C)36億円は将来負担(A)の193億から返済財源(B)の156億円をひいたもので、そのぶん将来の普通会計の何かを削って支払うこととなる。
正味の将来負担(C)は、おもに市町村が独自事業や国の補助事業をおこなったときに増える。かならずしも悪くはないが、多すぎると将来世代の予算の先食いとなる。ちなみに、これがマイナスであれば将来世代に蓄えを残したかたちだ。
標準財政規模(D)49億円は家計の生計費にあたるもので、国がローン返済のため交付する見込み額を除いた、住民サービスに使える分だ。
これらを家計に例えるなら、生計費が年に490万円の家庭がやり繰りの計画がたたないローン残高を360万円も抱えているようなもので、かなり多い借金だ。
(注1)平成27年度決算における地方債の残高145億円は一般会計に対するもので、公共下水道など特別会計を含めると残高は167億円となる。
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近隣町村との比較
上川地方の各町村がまとめた「平成27年度財政状況資料集」の将来負担についていくつか見方を変えたグラフで比較した。
図27-2
赤色の正味の将来負担(C)と青色の標準在籍規模(D)を重ね合わせたグラフで、家計の生計費とローン残高を比べたことにあたる。美瑛が突出して肥大化している。注目すべきは、人口が6765人の当麻町から784人の音威子府村まで、小さな町村の多くが将来負担ゼロかマイナスにしていることだ。
図27-3 ひとり当たりの正味の将来負担(C)
これは人口規模が多い町村との比較だ。ひとりあたりの将来負担がきわだって増える特別なまちづくりの恩恵が美瑛の住民にあるだろうか。
図27-4 標準財政規模(D)と人口の相関
人口が減れば標準財政規模(D)も減る。国の推計によれば美瑛の人口はいまのままなら2040年に7000人を割るから財政もおおきく縮小する。ローンもその分をみて減らしていかなければならないわけだ。
まとめ
財政における将来負担の問題は将来世代に与える影響がきわめて大きい。観光や美しい村といったまちづくりの動きもマイナーな問題といえるほどだ。美瑛のまちづくりについて、将来世代がかんがえなければならない論点がふたつある。
論点1. ―いまのところローンを減らす動きはないので、人口減少が進むなか将来の財政のやりくりは近隣の町村よりはるかに苦しくなる。―――次回のブログで。
論点2. ―いまのまちづくりがもたらすもの、つまりほかの町村より将来リスクを増やしてでも手にいれたい特別な価値または成果とはいったい何か。―――将来世代にとっての意味。
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by Noriaki Gentsu @NorthQuest, びえい未来ネット
参考資料
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