あらすじ
美瑛町ー 新地方公会計による行政コスト計算書の分析により、単年度の予算審議で見えにくい問題が見えるようになった。これは財政の単年度・中期・長期でバランスを判断する指標として使える。このデータによって、前の町政の財政運営がこの町の将来リスクを高めてきた問題を見える化できた。
データ
美瑛町財務書類の行政コスト計算書から主要部分を抜粋し、表1を作成した。行政サービスを行うために要したコストとなる。
※以上は行政コスト計算書のうち経常費用についてあらわした。経常収益と純経常行政コストについては、本稿の論点をシンプルにするため省略した。(2019-5-20追記)
問題点
総額の問題
これらのデータから前の町政は、人口減少・財政縮小のトレンドに逆行し、町民感覚で理解できない人為的な財政運営によって、このまちの将来リスクを高めてきた。
行政コスト総額は、東神楽町と上富良野町と比較して2-3倍の水準
H27-H29の短期間で、行政サービスの総額が大幅に増加
人口1万人未満の自治体平均52億円に比べて倍の水準
つぎの項目が問題となる。
補助金の問題
東神楽町と上富良野町と比較して2-3倍の水準
短期に増え続けている
減価償却費、維持修理費の問題
東神楽町と上富良野町と比較して過大
全体の構成比18%を占める減価償却費が増え続けるのは新しいハコモノ、全体の16% を占める維持修理費が増え続けるのは古いハコモノ。併せて34%を占めるハコモノ関連がほかの事業を制限する
※減価償却費は、行政の立場からは一年間に消費した償却資産の金額をあらわすが、住民の立場からはその金額に見合う施設インフラのサービスを受けたことを表す。よって減価償却費が平均的な水準より多ければ、住民が使いきれないほど過剰の資産を行政が有していることになる。(2019-5-20追記)
物件費の問題
東神楽町と上富良野町と比較して1.5倍の水準
増えている
課題
中長期の財政マネジメントに新地方公会計の財務書類を活用し、年度予算のシーリングに反映すること
美瑛町の行政コストを中長期の計画で合理化すること。補助金とハコモノ。
農業や観光、6次産業などの成長分野にシフトする資金を捻出すること
まとめ このまちの家計が、補助金とハコモノ関連のコストを併せて全体の64%と硬直化し、未来に向けた成長の足かせとなっていることを自覚すべきである。
前の町政が財政を最悪状態から立て直したの事実としても、健全化したとまでは言えない。
目先だけ見て予算を配分するまちづくりから、短期・中期・長期の課題に先手を打つまちづくりに転換が必要だ。
ここで使ったデータは現状の予算審議には出てこない。委員会で中長期の課題を研究し、予算審議に活かす対応が必要だろう。
縦割り組織の役場では、ここで使ったデータがあっても問題を指摘するインセンティブにはならない。企業のように、現状の分析から中長期の課題を提案するひとが評価される風土を醸成する必要があるだろう。
町民がまちづくり会議に参加し意見を言うだけでは意味がない。役場がデータと短期・中期・長期の課題を整理したうえで町民に痛みのともなう解決策を話し合う必要があるだろう。
以上
備考)
新地方公会計制度
新地方公会計制度は企業会計制度の考え方を自治体に適用し、お金の使いみちや中長期の資産や負債の見通しを把握し、マネジメントを強化するために平成27年度(2015年度)から全国で導入された。財務書類としてWebサイトに公開されている。
行政コスト計算書
財務書類の4つの書類のひとつが行政コスト計算書となる。企業の損益計算書 (P/L)にあたる。いままでの歳入歳出決算書よりつぎの点がわかりやすくなる。
いままで入っていた普通建設事業費や地方債(ローン)を除き、行政サービスにかかった費用だけを計上する。
いままで入っていなかった建物の減価償却費や退職金の引当金を、行政サービスにかかった費用として計上する
なお、この投稿では収益の部分は除き、費用だけ示した。かかった費用が町民サービスのコストとなる。
by Noriaki Gentsu @NorthQuest, ーびえい未来ネット
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