あらすじ
美瑛町ー- 自治体の財務書類(BS,PL)を分析し、人口減少の未来の財政の問題の事例研究をおこなった。論点整理により、少ないものでも必要な情報があれば、やらなければならない事業(MUST)が見つかる。町民と役場が未来につなぐまちづくりの対話を行うときも、「何が問題か」よく見える論点整理が欠かせない。
今まで、なにが問題か見えない
いままでのまちづくりはつぎのように言いあらわせるとおもう。
人口減少の未来に重要な問題がいつまでも問題のまま残っている
「何が問題か」を町民に示さないまま、予算と事業が動かしてきた
その証拠に、たとえばつぎのような問題が、解決の道すじが見えないまま残っている。すくなくとも町民へのわかりやすい説明はなかった。
農業の担い手の問題の今後の見通しはどうか?ー何がいちばんの問題か?
観光客の農地侵入の問題はなぜ減らないか?ー何がいちばんの問題か?
宿泊観光客はなぜ増えないのか?-何がいちばんの問題か?
観光で美瑛全体が(税の投入以上に)儲かっているのか?
これから、問題解決のカギは「何が問題か」(=論点整理)
「未来のことはわからないが、知る方法はある」と言ったドラッカーを引用しなくても、美瑛町の人口が2040年代に6000人台になったときの問題はおよそ見当がつく。
生活環境・産業・地域経済・自治体財政の主要項目を調べる
現在と将来のギャップ(=問題)が大分あるだろう
「問題は何か」と考えることが問題解決プロセスの始まりだ。かって実践したことのないプロセスだが、実行すれば未来につなぐまちづくりになる。未来の問題のために効果的に予算を使うことができる。
論点整理:「そもそも問題になるかどうか」ー「何がいちばんの問題か」
課題設定:「課題を適切に設定する」短期・中期・長期の目標設定、KPI
事業の実行:「アクションプラン」短中期のMilestone
問題と課題の検証:PDCA
ケーススタディ(将来財政の論点整理)
そこで今回は、少ないものでも必要な情報があれば「何が問題か」=論点整理ができることを事例で示す。
美瑛町の財政が過剰なハコモノによって制約されていると指摘した前回のブログ(No.58 行政コスト~目の前の問題を見つける)を掘り下げる
課題とやらなければならない事業(MUST)を見つけやすくなることを示す
問題解決に役立たない、やれる事業(CAN)とかやりたい事業(WILL)を排除できることを示す
データの分析方法は脚注の(注1)で説明
ひとりあたりの純行政コストの比較(表1)
ひとりあたりの純行政コスト(表のピンク色)は美瑛町が94万円となり上富良野町と東神楽町より大幅に高い。
類似団体の平均(表の緑色)と比較しても、美瑛町のコストは高すぎる。
ひとりあたりの資産の比較(表2)
前回ブログNo58によれば、美瑛町は行政コスト(※)の23-33%がハコモノの減価償却費と維持補修費が占め、行政の自由度が保有資産で制約されている。※経常費用
そこで、行政サービスに使う資産額について調べた。
ひとりあたりの資産保有高(表のピンク色)は美瑛町が422万円となり上富良野町と東神楽町より大幅に多い。
類似団体の平均(表の緑色)と比較しても、美瑛町の資産保有額は多すぎる。
資産の内訳(図3)(図4)
美瑛町の保有資産額のうち、有形固定資産の内容を分解した。
図3の事業用建物と図4のインフラ工作物(道路、橋梁)に分けた
取得額を減価償却済と未償却金額に分けた
上富良野町と比較した。
論点整理
現状の行政コストの23-33%がハコモノの減価償却費と維持補修費が占める。
そのうち18%にあたる減価償却費約20億円は、インフラ工作物(道路、橋梁など)が約16億円、事業用建物が約4億円に分かれる。
インフラ工作物が年16億円のペースで償却すると仮定、未償却インフラの残存価値292憶円(図3)は理論上2034年にゼロとなり、すべての資産が耐用年限に達する。
事業用建物が年4億円のペースで償却すると仮定、未償却の事業用建物の残存価値72憶円(図3)は理論上2033年にゼロとなり、すべての資産が耐用年限に達する。
2033年ぐらいまでのあいだに、高度経済成長期に建設したインフラと建物を造り替えなければならない。・・・これ以上の分析は固定資産台帳がないとできない。
ここで金額的に大きいインフラ工作物は他と比較して広大な土地をつなぐ道路ネットワークと考えられる。2040年代の、耕作地と居住地と道路ネットワークを含む土地活用のグランドデザインが必要なことを示している。・・・これ以上の分析は固定資産台帳がないとできない。
事業用建物の減価償却の約4億円は、付帯した年間維持費(約6億円)と町民の利用の視点でさらなる分析が必要だ。
美瑛町の総合計画や都市計画において、このような論点整理は見当たらない。
まとめ
少ないものでも必要な情報があれば重要な論点を整理できる。情報を分解する・比較する・時間変化を見る、この作業をおこなえば問題が見えてくる。
長いあいだ積み残した問題について、役場がきちっと論点整理し、公報や町民とのまちづくり対話のなかで示してほしい。
論点整理によって、課題と「やらなとければならない事業(MUST)」が見つけやすく、効果的な予算配分ができる。問題解決に役立たない、「やりたい事業(WILL)」や「予算があるからやれる事業(CAN)」などのムダが排除できる。
by Noriaki Gentsu @NorthQuest, ーびえい未来ネット
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脚注
(注1)データの分析方法
(注2)
(注3)このブログで着目した行政コストは、純行政コストとする
(純行政コスト)=(経常費用)ー(経常収益)ー(臨時損失)+(臨時利益) 経常収益は施設使用料などで約5%、臨時損失と臨時利益は通常約1%以内につき、このブログで(純行政コスト)≒(経常費用)とみなした箇所もあるi
参考資料
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