あらすじ
前回のブログ――No.27将来負担が突出した美瑛の財政――で指摘したのは、地方債(ローン)が減らないと、将来世代の負担が大変だということ。
そこで将来負担を左右する地方債(ローン)に関する規律があるか調べた。残念ながら、町財政の基本とうたう「美瑛町財政運営計画」(注1)をみるかぎりそれはなかった。
いつも、向こう6か年は借入とローンを減らす計画だが、数年後にふたを開けると実績が大きく増える悪いパターンがある。しかも計画と実績の差について合理的な説明がない。
向こう6年ぐらいの地方債(ローン)の計画と実績がコロコロ変わるようでは、人口減少のなかで将来世代の負担が増える心配などおよそ解消できない。
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図28-1 地方債(ローン)の推移―美瑛町、決算
折れ線グラフは地方債(ローン)の残高<右側の軸>、棒グラフは緑色が返済額、青色が借入額。(注2)
地方債残高(ローン)は、ローン返済のピークだった平成19年から緊縮財政によって減ってきたが、平成24年から上昇に転じた。
(注2)なお、平成27年度決算における地方債の残高145億円は一般会計に対するもので、公共下水道など特別会計を含めると残高は167億円となる。
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「美瑛町財政運営計画」における将来負担の規律
図28-2と図28-3は平成22年度の当初計画(青色)に対して、実績(赤色)がどうなったか、ローン残高と借入額について示した。計画(青色)は、平成20年度と平成21年度の実績に平成22年度以降の計画を併せて示している。実績(赤色)は、4年目から計画とかい離しはじめる。
―――図はクリックで拡大します。
図28-4と図28-5は平成25年度の当初計画(青色)に対して、実績(赤色)がどうなったか、ローン残高と借入額について示した。計画(青色)は、平成22年度から平成24年度の実績に平成25年度以降の計画を併せて示している。実績(赤色)は、翌年から計画とかい離しはじめる。
―――図はクリックで拡大します。
図28-6と図28-7は平成28年度の当初計画(青色)に対して、実績(赤色)がどうなったか、ローン残高と借入額について示した。計画(青色)は、平成25年度から平成27年度の実績に平成28年度以降の計画を併せて示している。実績(赤色)は、平成28年度見込み(注3)のみ示した。
平成31年度から、近年で最も緊縮財政となった平成19年度の7.3億円より少ない借入とする急激な計画が突如あらわれた。住民への影響など合理的な説明はないし、数字の信頼性もわからない。
国の示す財政健全化指標に抵触しないよう数字をあわせただけか
公共投資の需要が実際に少なくなるのか
何らかの新しい規律を作ったのか
―――図はクリックで拡大します。
まとめ
そこで将来負担を左右する地方債(ローン)に関する規律があるか調べた。残念ながら、町財政の基本とうたう「美瑛町財政運営計画」(注1)をみるかぎりそれはなかった。
いつも、向こう6か年は借入とローンを減らす計画だが、数年後にふたを開けると実績が大きく増える悪いパターンがある。しかも計画と実績の差について合理的な説明がない。
向こう6年ぐらいの地方債(ローン)の計画と実績がコロコロ変わるようでは、人口減少のなかで将来世代の負担が増える心配などおよそ解消できない。
なお、ここでいう地方債(ローン)に関する財政規律とは、人口減少も含めた将来世代の負担をマネジメントする姿勢のことで、国の示す財政健全化基準ではない。夕張市以外どこも抵触しない基準を守っても。前回のブログ――No.27将来負担が突出した美瑛の財政――のようにと、町村によって大きな開きがでる。
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by Noriaki Gentsu @NorthQuest, びえい未来ネット
参考資料
(注1)美瑛町財政運営計画 ―各年度
(注3)町財政の公表 ―美瑛町、平成29年5月
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