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(No.44)観光の経済がまち全体に波及しているか

最終更新: 2018年12月11日



あらすじ 美瑛町の観光のインバウンド消費がまち全体の経済に波及しているか。地域経済の自立と持続に役立っているか。つぎの仮説をたてて、ビッグデータを調査した。

  • 観光産業は、農業と並ぶほど域内GDPや、域外からの資金を獲得していない?

  • インバウンド消費が域内生産を十分に誘発していない?

  • その結果、観光業は儲かるがまち全体の経済の循環に寄与していない?

域内経済の概念 図44-1


RESAS(地域経済分析システム 、※1)のビッグデータを使うと、市町村レベルで域内経済の動きが見える。データベースは、大きく地域経済計算と地域産業連関表からなる。美瑛町のデータを得て、図44-1のような産業連関表のかたちに編成した。タテは生産(供給)サイド、ヨコは販売(需要)サイドからなり、両者がバランスする。

具体的に、

  • タテは生産で、(C)域内生産596億円は、(A)中間投入267億円(原材料や商品仕入など域内外の企業から調達したもの)と(B)付加価値329億円からなる。ここで(B)付加価値は域内GDPに相当する。 ※2

  • ヨコの (I)総需要1034億円に対し、タテの(C)域内生産596億円で不足する分を(G)移入438億円で埋め合わせ(D)総供給1034億円とし、需要と供給が均衡する ※3

  • (G)付加価値329億円(GDP)= (E)域内需要539億円 + (F)移出228億円 - (G)移入438億円の関係がある。――移入超過の分だけGDPが目減りする 

移入超過はつぎのように経済の自立と持続性の問題に波及する。

  • 地域内の需要を地域内の生産で賄えない

  • 資金が域内で巡回せず、域外に流出する

  • 地域内の付加価値(稼ぎ、GDP)が減る

産業別の移出入収支 図44-2


図44-2a 2013年の産業別の移出入収支の分析はつぎのとおり

  • 1次産業は移出超過(資金流入) (農業66億円、林業1億円、2013年)

  • 3次産業は大幅な移入超過 →稼いだ付加価値(GDP)を超える資金が域外に流出

  • 2次産業の、2010年~2013年の不安定な変動は建設業による。下図も参照。2010年は政権交代、2013年はアベノミクスと震災復興による激変があり、真の実力はわからない。本考察の対象外とした。


3次産業

3次産業はサービス業。一般に地方では移入超過(資金流出)、札幌など大都市は移出超過(資金流入)となる。たとえば、エネルギーや通信費、スーパーの商品、機械など多くのモノ・サービスは都市から地方へ、その対価として資金は逆方向に移動する。

地方では、1次産業(農林水産業)の生産物を都市に移出して、3次産業の移入と収支バランスをとるのはなかなか難しい。そこで、経済の自立のため、農業や水産業の6次産業化や、3次産業の観光のインバウンド消費の取込み具合がまちの経済を左右する。

3次産業 ニセコ町との比較 図44-3


小さくても自立したまちづくりのひとつの解は、観光によって地方の3次産業の移出入収支をバランスできること。 農業も観光もあり美瑛の将来人口に近いニセコ町(人口5000)を見ると、3次産業の弱点をうまく観光でカバーしているように見える。図44-3

  • (美瑛町)付加価値169億円(GDP)を稼ぐため、町外に195億円の資金流出

  • (ニセコ町)付加価値90億円(GDP)を稼ぐため、町外に86億円の資金流出

観光産業(対個人サービス)の比較 図44-4


美瑛町とニセコ町の3次産業の差は、おもに観光業を代表する対個人サービス(宿泊業・飲食サービス業・生活関連サービス業・娯楽業を含んでいる)にあるようだ。図44-4

  • 3次産業に占める対個人サービスの割合。ニセコ町は3次産業の付加価値90億円の35%(32億円)、美瑛町は3次産業の付加価値169億円の11%(19億円)と大きな差がある。

  • 対個人サービスがまちにもたらす所得と資金流入。ニセコ町は付加価値32憶円、資金流入44億円とダブルの恩恵をもたらしている。美瑛町は付加価値19憶円と儲かっているが、資金流入4億円とまち全体への貢献はすくない。

  • 両町の対個人サービスの資金流入の差は、対個人サービスの域内の産業間取引額(2013年)の差で説明できる。美瑛町(37億)ニセコ町(62億)、つまり、域内からモノ・サービスを調達しているかどうか。

基盤産業としての観光(対個人サービス)図44-5


基盤産業には、まち全体の所得となる付加価値(GDP)と、域外から資金流入を獲得する役割がある。その意味で美瑛町において、観光を代表する対個人サービスはインバウンドと称するレベルに達していない。

  • 対個人サービスの付加価値(GDP)は19億円で、農業44億円に比べ少ない

  • 対個人サービス部門の域外からの資金流入は4億円で、農業66億円に比べ微少

まとめ 1.統計データから、美瑛町の観光産業は儲かっているが、まち全体の経済に波及していない可能性がある。

  • 代表的な業種「対個人サービス」の生産分析から、域外から獲得する資金の額は、付加価値(GDP)を基準として少ない ――美瑛の「農業」、ニセコ町の「対個人サービス」、およびインバウンドの期待に比べて

  • 域外から獲得する資金が少ない要因として、「対個人サービス」の域内の産業間取引額が付加価値(GDP)を基準として少ない(ニセコ町比較)

  • 域内の産業間取引は重要なKPI ーー域内取引が少ない→町外からの仕入れ→資金が流出→インバウンドの資金流入を相殺

2.地域観光の戦略マネジメントの基軸が要るーーまちおこし・賑わい・活性化を経済的にあらわしたもの

  • インバウンド消費から獲得した資金をまち全体に循環させる GOAL

  • それには、観光客に売るモノ・サービスの域内自給率を上げる KPI

  • それに適した地元のモノ・サービスはなにか WHAT

  • それを地元の企業でどう連携して作るか HOW

  • これらの付加価値の新たな受け皿となる地元の資本を誰が動かすか WHO

3.観光の地域経済への波及について考えるべきこと ーー詳細は、次回ブログで

  • 観光の経済波及効果 ―― (推定消費額) X (人数)  以外に、域内自給率、生産誘発などの考慮が必要

  • 原産地でなく製造・販売元が域内かどうかの問題。道の駅の商品はほとんど域外の会社が製造・販売元。経済効果はコンビニと変わらない。6次産業の難しさを象徴。

  • モノでない、域外調達できない、かつ地元の場所・人手・時間が付加価値となる観光サービスの実現性はあるか?

by Noriaki Gentsu @NorthQuest, -びえい未来ネット

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※1.RESAS (地域経済分析システム) →URL   生産分析事例 →クリック

※2.付加価値 = 生産額(売上高)- 中間投入

  • 中間投入は、生産に要する原材料費や商品仕入れ、外注加工費など域内外の企業からの調達額

  • 付加価値は、域内に所在する事業所が事業活動を通じて生み出した価値を指す。粗付加価値ともいう。GDP(国民総生産)、域内総生産(GRP)と同じ概念。家計、企業、政府(税)に分配する所得の源泉。

※3.移出とは域内で生産した財(モノ)・サービスを域外に販売、移入とは域外から調達すること。観光のインバウンド消費は、域外から資金を流入させるので、モノ・サービスを移出したと同じ効果がある。

  • 移輸出入収支とは、域外からの(移出・輸出に伴う)収入額から域外への(移入・輸入に伴う)支出額を差し引いたものである。

  • プラスの産業は移出超過で域外から資金を流入させ、マイナスの産業は移入超過で域外に資金を流出している。

参考資料

1.地域経済循環マップの概要 ー内閣官房まち・ひと・しごと創生本部事務局 →クリック

2.地域経済循環マップについて ー内閣官房まち・ひと・しごと創生本部事務局 →クリック

3.地域経済環境分析解説書 -株式会社価値総合研究所 →クリック

4.産業連関表の仕組み ―総務省 →クリック

#観光戦略 #未来の課題

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