あらすじ
美瑛町は、地域経済の活性化のため観光市場にかなり投資している。しかし、ここ1-2年の観光宿泊客の上川管内の伸びに応じた、適切なシェアを獲得できていない。単価が高い部分で投資に見合った成果(回収)がない。問題は、市場の伸びをほぼ独占した旭川や占冠のパワーが民間投資からきていること。美瑛町の行政主体の観光マネジメントの限界を最新データで確かめていく。
成長市場の分け前を取ったのはどの市町村?
つぎのチャートは、美瑛町の観光マネジメントが競争市場においていかに成果を上げていないか示している。――数字の引用は、北海道経済部観光局・観光統計ポータルサイトより 注1
つぎのチャート➀は、2016年から2017年の1年のあいだに上川管内の宿泊者延数が309,000人増えた分を、各市町村がどう分け合ったか示している。成長市場にもかかわらず上川町と美瑛町が減らしている。名寄市の増え方に着目したい。
ーこのウォーターフォールグラフ(注2)の見方:上川管内の伸びは、占冠村・旭川・名寄市・富良野市・その他をプラスで積み上げたものから、上川町と美瑛町のマイナスを引いた合計となる。
つぎのチャート②は、2015年から2017年の2年のあいだに上川管内の宿泊者延数が246,000人増えた分を、各市町村がどう分け合ったか示している。上川町と富良野市が大きく減らし、2016年の台の風の影響から回復していない。美瑛町はこの2年間の成長はない。
つぎのチャート③で、宿泊者延数の長期トレンドを確認する。旭川市と占冠村が災害に関係なく市場のトレンドを牽引している。富良野市と上川町は2016年の台風被害から回復する兆しが見えない。旭川市は駅周辺のホテル建設、占冠村はトマムリゾートの民間投資が成果につながっtたと思われる。美瑛町については後段にて。
外国人の動向はどうか?
つぎのチャート④は、2016年から2017年の1年のあいだに上川管内の外国人の宿泊者延数が153,000人増えた分を、各市町村がどう分け合ったか示している。成長市場にもかかわらず美瑛町と富良野市が低迷している。
つぎのチャート⑤は、2015年から2017年の2年のあいだに上川管内の外国人の宿泊者延数が210,000人増えた分を、各市町村がどう分け合ったか示している。上川町が大きく減らしている。2016年の台風の影響から回復していない。美瑛町はこの2年間で若干増やしたが、市場の勢いには追いつかない。
つぎのチャート⑥で、外国人の宿泊者延数の長期トレンドを確認する。トマムを有する占冠村が外国人の増加を独り占めした感じだ。美瑛町については後段にて。
どうなっている美瑛の観光マネジメント
以上のデータと下のチャート⑦とチャート⑧を見ると、北海道の成長スピード以上で伸びる上川管内の観光宿泊市場において、美瑛は競争から取り残された。その根拠として・・
外国人の宿泊が頭打ちとなってきた
トータルの宿泊も減少に転じている
観光入込客数も数年前から頭打ちとなったーチャート⑧
まとめ
1.以上に示したように近隣との競争に負けている美瑛町の観光。だが、投資して成長市場がとれなければ投資しない方がましとはならない。それは、つぎのマネジとメント感覚に違いがあるのだろう。
伸びている市場から、投資に見合った成果を求める「投資と回収」の原則
成果を出すために競争に勝たなければいけないということ
競争に勝つために合理的な目標設定が必要ということ
2.そのようなマネジメント感覚の違いは、主に行政の発想からきていると思う。
民間は自分の資金を投資するのにたいして、主に自分のカネでない税金から投資できる
投資した資金を回収しなくても、税金から新たな資金が毎年入ってくる
観光事業予算がとおれば、事業を実施したことが成果となるので採算は検証しなくてよい。ーーそして、見えやすいイベント、投資に見合わないランチ需要の開拓、みやげ販売などに終始する。
3.民間の投資とマネジメントが成功をもたらしている近隣の市町村の事例。
旭川市の駅周辺のホテル建設、占冠村のトマムリゾート建設などが、競争市場を牽引している
儲けの源泉を民間の宿泊産業におき、物販や観光サービス・イベントに波及していく相乗的な経済
旭川空港の民営化という次のステージにさらなる投資を行うだろう。
by Noriaki Gentsu @NorthQuest, -びえい未来ネット
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参考資料
注1)北海道経済部観光局・観光統計ポータルサイト →URL
注2)ウォーターフォールチャートとは、利益などの累計額が個々の要素ごとのプラス・マイナスがどのように積みあがっているか一目でわかりやすく表現したグラフのこと
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