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(No.60)観光産業をめぐる5つの論点



あらすじ

2018年度の美瑛町への観光客入込数226万人を記録、とのコメントが飛び交っている。これが良いとか悪いとか、戦略にもとづく話はない。いまの厳しい競争環境で美瑛の観光が独り立ちし、基幹産業に成長するのは無理でないか?美瑛町の強みを活かす新たな基幹産業を再定義し、勝てる戦略に転換してはどうか?

論点1.226万人は良いか悪いか?

美瑛町は、観光客を約200万人に抑制しつつ量から質へ転換する方針(※1)を掲げた。しかし2018年度の美瑛町への観光客入込数が過去最高の226万人を記録(※2)、とのコメントが飛び交っている。これが良いとか悪いとか自分たちの戦略に基づいた話が必要ではないか?


※1. 2018-12発行、観光マスタープラン前書きの抜粋

  • ”美瑛町の観光の基本方針は、いままでの美瑛町観光の歩みを評価したうえで、美瑛町観光の「これから」を考えるためにあえて、大きな方向転換をはかることにしました。観光客の「数」から観光の体験の「質」の追究へ、観光客まかせの巡り方から、地域がデザインした巡り方へ、そして「有名木」を見る観光から「くらし」体感する観光へ。美瑛の観光が変わります。”

※2.北海道庁のHPでのデータ公開は例年8月。


観光客を抑制する方針に至ったおよその経緯はつぎのとおりだ。

  • 2014年度(H26)に179万人を記録、町長をはじめ町中がこの数字に湧いた

  • 2015年度(2016/2/24)に哲学の木が倒される

  • 2016年度(2017/2/28)、町民をいれたWGで観光マスタープラン(案)を取りまとめ

  • 2018年度(2019/12)、役場より美瑛町観光マスタープランを町民に配布

論点2.宿泊を伸ばす戦略は成立しないのではないか?

美瑛町のDMOの設立計画書のKPI(目標値)(図1)によれば、宿泊観光は極めて低い成長しか見込めない。厳しい競争のなかで宿泊客を伸ばす戦略は成立しないのではないか?


競争の激しさはつぎのようになっている。宿泊産業における強者のペースで弱者の美瑛が他戦ってうまくいく見込みはない。

  • 収容能力は相手が圧倒的に多い(図2)

  • 投資規模が相手が圧倒的に大きい。例えば、2018年だけで富良野の客室が700~800室(推定1,200~1,400人分)増えたと聞く。これはオール美瑛に匹敵する能力だ。

  • 他方、弱者の美瑛は、年間1,000人~2000人の宿泊増しか見込めない。


図1.丘のまちびえい活性化協会(DMO)の計画書

図2. 宿泊施設比較 DMO資料、富良野市は道・保健統計年報H27

論点3.観光は農業と並ぶ基幹産業になれないのではないか?

いまの厳しい競争環境で美瑛の観光が独り立ちした基幹産業に成長するのは無理でないか?

  • 厳しい競争にさらされた美瑛の宿泊業はSWOTの弱みに相当する。これを強みに変える戦略は見つかっていない

  • 美瑛の日帰り観光はSWOTの強みに相当する。しかし観光客を抑制して消費単価を増やすよい戦略は見つかっていない

  • いまの個別最適の組織の実力で上記のジレンマを解消する力はないだろう

論点4.新たな基幹産業を再定義してはどうか?

国が決めたDMO計画書は提出するとして、美瑛町の強みを活かす新たな基幹産業を再定義し、勝てる戦略に転換してはどうか?

  • 従来の丘めぐりONLY観光からの脱却。(儲かる基幹産業になりえない)

  • 観光の農業依存からの脱却。(農業と観光の対立スキームのリセット)

  • 発想の転換。農産品と食品と飲食と観光サービスを合わせた「6次産業」が美瑛の新たな基幹産業と定義するーー基幹産業の農業と両輪をかたちづくる

  • 「6次産業」と一体化した、あるいは受皿としての宿泊業を育成する

  • 新たな基幹産業「6次産業」の事業戦略と、機動的な「まちづくり株式会社」

  • 戦略の基本は、「雇用を含む付加価値の成長」「選択と集中による投資」

  • 従来スキームの観光関連組織と予算の再編

論点5.観光マスタープランを書き換えたらどうか?

このプランは白紙に戻し、「観光客の農地の侵入をなくす」という単一目的に紐付けた、数値目標と実施事業、および責任部署を定めた検証可能なプランに書き換えてはどうか?

  • これは農家の苦情と儲からない丘めぐり観光の妥協のなかでできたプラン

  • エリアマネジメントで農地を保護する当初の目的が、22もの事業を計画し、10年かけ町民の観光に対する理解度14.5%から24.5%にあげるとしたやる気のない目標に変質(図3)

  • 観光客の農地への侵入は悪化しているから、このプランは機能していない。

  • 新たな「6次産業」の戦略においても丘の景観に人を吸引する必要がある

図1 KGI / KPI  マスタープランの4ページより

まとめ

美瑛の観光業を基幹産業と位置付けたことで多くの弊害が出ている。

  • 美瑛の農業景観や青い池など地域資源から一部の業界だけが恩恵を得ている。(町民の理解度14.5%)

  • そのための投資は、ほとんど公的資金に依存している

  • 投資の回収や、まち全体の経済に対する貢献が見えてこない

  • 民間の活力がない。震災後のインバウンド急増分は競合の市町村にほとんどとられた

以上、将来展望がない従来スキームをリセットし、地域資源をまち全体が活用する新たな産業を定義し、局面を打開する必要を感じたため、いくつかの論点を提供した。


by Noriaki Gentsu @NorthQuest, ーびえい未来ネット

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