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  • 執筆者の写真NorthQuest |びえい未来ネット

第14報. 美瑛の観光~戦略の検証(序論)



地方自治体の観光振興事業であっても、本質は経済的利益の追求である。利益を増大が雇用を増やし、雇用の増加が周辺産業の経済へと循環する、その結果、雇用と税収のかたちで公共に還元される。よって、福祉と違い、この事業は利益を追求するビジネス戦略として見るのが妥当である。ここに、平成26年に空前の観光入込総数を記録した美瑛の観光の戦略について検証を行う。

戦略検証するひとつの手順(例示)

  • 「目指す目標」と「現状の問題」

目標は具体的であとで検証可能か?目標と現状の差異(ギャップ)が具体的に把握できているか? (参照ブログ→こちら )

  • 「打ち手」の妥当性 (上図を参照) 「必要性」~目標と現状のギャップを問題と考え、「やらないと大変なことになる」と認識する 「効用」~「こうすれば問題が解決する」と論証する。 「可能性」~「解決の方法がある」「費用対効果」「投資回収(または公益の還元」を論証する 「結論」~この打ち手を実施するかどうか (注)自治体の場合、「打ち手」を「事業」と、「妥当性」を「仕分け」と読み替えてもよい。

  • 実行体制 民間では、経営資源(ヒト・モノ・カネ・情報)を権限と責任を一元化。利益も損失は会社に帰属。 地方自治体では、財源に税が含まれること、責任と権限の所在が不明確になりやすいこと、税負担と受益の公平性や投資回収基準があいまいなこと、などの留意点がある。

手順に沿った現状レビュー

平成26年度に179万人の入込総数があった。画期的なことであるが、これに満足すると思考停止する。逆に、批判精神を発揮して「179万人? So What?(だからどうしたの?)」と問いかけてみれば、疑問と課題が次のように湧いてくるのである。

  1. (目標).入込総数は一体どこまで伸びるのか?いや、伸ばしたいのか?  そもそも、これの目標値があると聞いたことがない。目標値がなければ、PDCAマネジメントができない。できなければ、事業の効果が測れない。測れなければ、事業が公共の利益(経済効果・雇用・税収)に還元されたかどうか判らない。これは問題だ。     →課題(観光振興の目標を持つこと)

  2. (目標).入込総数の目標値は作ったとして、もっと儲かる宿泊を増やしたい。   入込総数と宿泊客延数が比例するなら、入込総数だけ追いかければ十分だが、確かめないと・・・ →課題(入込総数の伸びと宿泊客延数の伸びの相関をつかむこと)

  3. (体制).お宝を見つけるのは誰か?   ニセコの夏冬リゾートも、小樽のガラスや運河も、旭山動物園も、成功したビジネスは、もとは民間や個人が模索して、地方自治体が支援した。ニセコに雇用増と人口増をもたらした人々は、後にカリスマと呼ばれるようになった。「よそ者」「若者」「バカ者」が鍵と言われている。”まちづくり”より”ひとづくり”が上位にあると考える所以である。募集したお宝は価値がない。やる気のある人がリスクをとって起業して当たれば初めてそれがお宝となる。そのリスクのセーフティネットを張るのが役所であろう。例えば、シェフ育成研修所の卒業生の町内起業の支援も有意義であろう。 →課題(民間の観光ベンチャー起業を支援すること)

  4. (目標)(打ち手).そもそも美瑛の観光のビジネスモデルとは何か?   ビジネスモデルとは、保有資源を活用してお金を儲ける仕組みの全体像のこと。青い池で集客して、一日では回れないほど観光スポットやお店やアートがあって、お金を使ってもらって、リピートしてもらって、通信販売で産品を買ってもらって、口コミしてもらって、継続的に儲ける統合モデルのこと。ニセコでもない、登別・層雲峡でもない・富良野でもないモデルを・・・。旭山動物園や風のガーデンのブームが去ったように、青い池の集客はいつか下降期を迎える。一度訪れた観光スポットをリピートする人は少ないのである。 → 課題(美瑛の観光ビジネスモデルを描くこと)

  5. (体制)(税負担と受益).この複雑なステークホルダ(利害関係者)の問題をクリアしないと・・   ニセコの解は、観光協会を株式会社にして、町民の株主と役場が出資することであった。美瑛でも同じにすれば、観光スポットの景観を提供している農家に観光協会(株)の株を発行して配当すれば一定の解決になるのでは?仕事場に見学客が入ってきたら誰でも困る。また、観光協会(株)の事業所得税と配当が町にはいれば、税負担と受益の公平性も改善するのでは? →課題(利害関係者の問題を解決できる観光協会の組織)

まとめ

簡単なレビューで、多くの課題が浮かんできた。これらの各論を、次の投稿で掘り下げることとする。

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参考文献

  • 地方創生ビジネスの教科書  増田寛也 文芸春秋

  • 地方消滅   増田寛也 中公新書

  • 自治体バランススコアカード 石原俊彦 東洋経済新報社

  • 稼ぐまちが地方を変える 誰も言わなかった10の鉄則 木下斉 NHK出版

  • 実践!田舎力 小さくても経済が回る5つの方法 金子弘美 NHK出版

  • 地域再生の罠 --なぜ市民と地方は豊かになれないのか? 久繁哲之介 筑摩書房

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