将来のまちづくりの担い手を目指す人に。役場の資料や説明は難しくて質問しにくいと思っていませんか?町民は議員や職員より情報が圧倒的に少ないので当然です。今回は「課題共有フレーム」をマスターしてこの状況を打破しましょう。テーマは『複雑なテーマに、①どう向きあうか?②何を質問したらよいか?』
「課題共有フレーム」の作り方
複雑な問題やテーマに直面したとき、課題の基本構造を見える化した「課題共有フレーム」↓↓に核心の情報を落とし込んで考えます。グループのときはホワイトボードを使えば焦点が絞れて効果的です。→説明は図の下に続きます。
※問題と課題の定義は万国共通で、JIS規格・ISO規格を始め広く企業活動のなかで定着しています。興味のある方は末尾の参考資料にて。
得られた情報の枝葉末節を捨て、核心だけをこのフレームに落とし込みます。情報がなければ空欄にしてあとで質問します。上図↑↑の説明です。
現状Ⓐ:現状の望ましくない、解決したい問題は何か。あるべき姿Ⓑ:現状をどう変えたいか? これらを検証可能なかたちで表現します。・・・悪いⒶ/良いⒷ、少ない/多い、40点/60点、利益▲10/利益⊕30(40アップ)、5段階評価1/4など
現状Ⓐとあるべき姿ⒷのギャップⒸと、これから取り組んで解消したいギャップⒹを定義します。・・・ギャップⒸは不明な場合があります
ギャップⒹと、これを解消するための有効な打ち手Ⓔをリンクします。・・・ギャップⒹはKGI, KPIに相当します
※打ち手Ⓔは、具体的な施策・事業を組み合わせたアクションプラン(5W1H)で、要件はPDCAが回せること。
※目的と手段の混同に注意します。目的はあるべき姿ⒷでWHY?、手段は打ち手ⒺでWHAT? HOW?と問いかけながら仕分けします。
「課題共有フレーム」の事例
では、上の図↑↑に具体的な数字を入れてもう一度説明します。
問題とは、現状ののぞましくない状態のことです。例えば60点に設定された試験の合格ラインⒷに対して現状が40点Ⓐだと、問題Ⓒはギャップ20点です。・・問題の特定
課題とは、現状を踏まえて、解消したいギャップのことです。例えば次回は80点を目標Ⓑに頑張ろうと決意したとき、40点アップⒹが自ら設定した課題となります。・・課題の設定
つまり問題とは誰かが決めた基準に対してギャップⒸがある、あるいは基準はないが個人的に現状に不満な状態です。課題は、①解決したい意思と②自ら設定した到達目標があります。
課題の設定はひとの意欲で異なります。町民と議会と行政が協働する場合は同じになるよう調整します。・・課題の共有
※ギャップⒹは期待効果と同じです。適切な日本語とKGI,KPIの組み合わせで定義します。
※費用対効果=(期待効果Ⓓ)÷(打ち手Ⓔ(事業)のコスト)
※実際にはⒶⒷⒸⒹは複数の要素が因果関係でつながっています。これらは小さな要因に分解して考えるます。次回以降に触れます。
質問を考えるポイント
質問を考えるとき、いまの町政の傾向を把握しておくと役立ちます。
議会と行政の議論は個別事業(打ち手Ⓔ)に偏っています。予算検討において期待効果(フレームではギャップⒹ)の議論は少なく、決算認定でも得られた効果(フレームではあるべき姿Ⓑ)の検証が不足している。
そのため、効果のない事業を淘汰し、新しい事業に置換えるゼロベース思考の動きができにくい。
また役場の習慣として、事業を先に決め、目的は耳障りのよい抽象的なキーワードとなる傾向がある。つまり、ⒶⒷⒸⒹが不足した状態。
以上から、大雑把につぎのように言えると思います。皆さんの実感とあいますか?
町政の情報はⒺに偏って、ⒶⒷⒸⒹが不足した状態。
町民にはⒶⒷⒸⒹが理解しやすく、Ⓔは理解しにくい。
町民はⒶⒷⒸⒹが適切に与えられれば、Ⓔの値打ちはそれなりに理解できるかもしれない。・・・理想的な情報共有のありかた
要は役場と違う視点で町民の立場を活かして、テーマにアプローチすることです。これを踏まえて、難しいテーマについてⒶⒷⒸⒹを重点に質問を考えてみましょう。(Ⓔは大雑把に把握することとします。)
質問を考える(事例)
Beコイン
先日のまちづくり委員会でBeコイン関連の本年度予算の説明がありました。
Beコインの流通量(チャージ+プレミア付与ポイント)の、直近3年間の推移と本予算における見込みは?
Beコインの運用費用の総額(費用+プレミア付与ポイント)の、直近3年間の推移と本予算における見込みは?
総合計画(P75)Beコインの令和14年度のチャージ総額7400万円(あるべき姿Ⓑ)のときの、Beコインの運用費用の総額(費用+プレミア付与ポイント)(コストⒺ)の推定は?・・・まとめ質問。その心は、費用対効果は年々良くなるのが当たりまえ!そうなっているだろうか?
中心市街地活性化
まちづくり委員会で中心市街地活性化について概要の説明↓↓がありました。詳細の計画はまだなので、あくまで質問の練習と考えてください。
状況説明・・役場資料の「概要」より
『この計画は、このまちづくり総合計画に定める目標に沿い、商工業・観光業の振興、地域福祉の充実、既存施設の有効活用等を加えた総合的かつ具体的な計画とし、町民の同意の下で全ての皆様が安心して住み続けることのできる、或いは訪問することのできる地域づくりのための⾧期計画として進めてまいります。
具体的には、商店街の空き店舗対策、駅西側町有地の利活用、オーバーツーリズム対策(公共施設、交通網、受け入れの仕組み整備)などが解決すべき課題として挙げられており、本事業が解決の一助となるよう取り組みます。』
この記述ををそのまま「課題共有フレーム」に落とし込むと次の図↓↓のようになります。
これを見ると事業Ⓔがはっきりして、ⒶⒷⒸⒹが抽象的な印象です。費用対効果=(期待効果Ⓓ)÷(打ち手Ⓔ(事業)のコスト)の懸念があるので質問を考えます。
質問例
「商工業・観光業の振興」「地域福祉の充実」「オーバーツーリズム対策」は、あるべき姿Ⓑに相当するが、総合計画に定めたKPIのどれが相当するか?
「既存施設の有効活用等」「商店街の空き店舗対策」「駅西側町有地の利活用」「公共施設、交通網、受け入れの仕組み整備」は、事業Ⓔに相当します。「商工業・観光業の振興」「地域福祉の充実」「オーバーツーリズム対策」との結びつき(因果関係)を示して?
中心市街地活性化を検証可能なひとつのキーワード(KGI)であらわせないのか?例えば、AIで測定した人流を検討してはどうか?・・・まとめ質問。その心は、いまのキーワードのままでは費用対効果に不安がある!従来と同じにならないか?
美瑛高校の魅力化
状況の把握
美瑛高校の令和6年の入学者が12名となり道教委の再編基準を2年連続割り込んでいる。(意見1)高校の魅力化の取り組みで何とか道立高校として存続させたい。(意見2)それがだめな場合は町立化によって存続を図るべきだ。(意見3)町立化は長期にわたって維持できないからやめるべきだ。
「美瑛高校と町民の連携・協働によるまちづくり」
最近の議会の意見交換会のテーマのエッセンスは次のようになっていました。
ストーリーは「高校魅力化の推進すれば」→「高校と地域の連携・協働」が促進され → 「魅力ある地域づくり」
これを課題共有フレームに落としこむと下の図↓↓のようになります。
→図の下に続きます。
質問例
このように抽象的なキーワードで町民の意見を聞いてもばらばらでまとまらなかった
あるべき姿Ⓑを「生徒数(20人、30人、40人)の高校存続」と仮置きすべきではないか?・・・仮置きすればⒶⒷⒸⒹが埋められる
必要な入学者数Ⓓが決まれば最適なⒺの内容が検討できます。
役場がⒶⒷⒸⒹⒺを並行して総合的にⒷの成否を検証すればいい。
そのあとで町民にⒶ→Ⓑ→Ⓒ→Ⓓ→Ⓔのストーリーを提示し、意見を求めればいい。
以上の考えから、下の図↓↓に改善版の「課題共有フレーム」をつくってみました。
まとめ
「課題共有フレーム」を使えば、難しいテーマの核心に近づけます。次回は事例を深めます。
事業の中身より、得られる効果や期待する町の変化を重視して質問します。結果をどう検証するかも大事な視点です。
最近の役場のワークショップの取り組みで「課題共有フレーム」を使った良い事例があります。・・・次回に紹介します。
参考資料
今回はここまでです。
2024-4-5 Noriaki Gentsu @ NorthQuest(ノース・クエスト)・・Quest=探求する
あなたもメールマガジンに登録して、ブログの新着記事をひと足はやくゲットしましょう・・・登録はTOPメニューの「メルマガ」から
なお、記事の右上の「ログイン/新規登録」に登録したひとは、メルマガに登録したことになるほか、記事に対してコメントを記入することができます。
このブログがよければ、下にある「いいね」を押してください。押した人の情報はどこにも表示されません。
本サイトのFacebookページに「いいね!」か「フォロー設定」することで、新着ブログの情報をGETすることもできます。
Comments