9月議会の一般質問を聴いて、全体的に掘り下げが足りないと感じます。「これはどうなっている」「これについて町長の考えを」などの質問が多く、町として解決すべき問題を深く議論する場面が少なかったことに不満を感じます。そこで今回は、プラスとマイナスの両面からテーマの議論を深めることを提案します。
目次
9月議会の一般質問の感想
9月12日から13日の町議会の一般質問をYouTubeで見ました。全部で7時間あまり(休憩を含む)を視聴して、良いと思った議論はひとつかふたつです。行政職員と議員が約40人も出席した美瑛町の最高の議決機関の会議としては、物足りない感じでした。
なぜそう思ったのか、不満に感じた原因を考えてみます。
はじめに議員が質問を読み上げ、町長が答弁を読み上げるあいだに、議員がこの質問で明らかにしたい問題がはっきりせず、イライラさせられたこと。
続く再質問では、なぜそれが問題かと自説を展開することなく、「これはどうなっている」「これについて町長の考えを」などの質問が多く、町として解決すべき問題を深く追求する場面が少なかったこと。
つまり、なんでもかんでも言えばできる時代ではない、プラスもあればマイナスもある、何かをするときは制約条件がある、などの前提を忘れたやりとりに思えたこと。
しかし、よかった質問もありました。例えば美瑛の小中学校の再配置の問題を取り上げた京屋議員の質問です。その理由を考えます。
学童数の減少と小中学校の維持費の増大という相反する制約条件をデータで示して、誰も触れたくなかった問題を明らかにしたこと。
再質問では教育長の考えを訊くだけでなく、「だからこれからどうするの?」という点に踏み込んだこと。
その結果、「人口減少で小中学校の再編が必要でないか」と議員が言いたかったことに対して、「教育委員会として配置の見直しをする」と教育長にしかできないアクションを 引き出したこと。
まちづくり委員会で学んだこと
わたしには、まちづくり委員会に参加して学んだ質問の考え方があります。
この計画は現状をどう変えようとしているか具体的に言えるか。(KGI、KPI)
この計画が真に成功するために重要なことを3つ言えるか。(重要成功要因、KFS)
この計画が失敗につながる原因の仮説をいくつか言えるか。(プラスとマイナスの側面を考える)
例えば、最近の一年間のテーマはつぎのように考え、質問しました。
再生可能エネルギー導入目標 →成功のためには、家庭に導入する経済メリットや、事業所の新規ビジネスチャンスを具体例を町民が知って協力すること。(KFS)
東部地区コミュニティ施設 →保育所の幼児がいなくなった時の施設を活用する代替プランをはじめから計画に書いておくこと。(KFS、マイナス側面)
美瑛町町有財産利活用基本方針 →これから作るものが遊休にならないためにどうするかを明記すること。(KFS、マイナス側面)
美瑛町中心市街地活性化 →駅北エリアに集客し、経済の活性化につなげる戦略シナリオと評価の指標を持つこと。(KGI、KFS、計画のプラスとマイナス側面)
素人のシンプルな問いかけに、専門家が答えに苦労することがあります。それは当たり前のことを深く考えなおすことになるからです。例えば「ひとは何のために生きるか?」と訊かれたときもそうではないでしょうか?
ここまでをまとめると、わたしがまちづくり委員会に参加して学んだことは、計画の中身の質問で終わらず、基本的なことをシンプルなキーワードで訊くことです。たとえば、「現状をどう変えようとしているか」「うまく行くためには何が必要か」「失敗しないように何に気をつけるか」となります。
プラスとマイナスの側面を考えるとは?
上で述べた、わたしがまちづくり委員会に参加して学んだ質問の考え方を深めます。
この計画は現状をどう変えようとしているか具体的に言えるか。(KGI、KPI)
この計画が真に成功するために重要なことを3つ言えるか。(重要成功要因、KFS)
この計画が失敗につながる原因の仮説をいくつか言えるか。(プラスとマイナスの側面を考える)
ここで最後の「プラスとマイナスの側面を考える」がいちばん重要と考えます。
役場が町民に計画を公表するときマイナスの側面に触れることはほぼないから。
町民的には「中身はわからないが本当にうまくいくのかな」と漠然とマイナスの側面を思うときがあるから。
現実に事業の成果がおもったほどでない場合、考えなかったマイナスの側面が足を引っ張っていたということ多いから。
わたしは質問を考えるとき、下図↓↓のようなチャートを思い浮かべます。
たとえば移住政策のある事業について議論するときは、「それは人口の維持にプラスになるか?(Yes/No) 、なぜプラスと言えるか?Why?」などと考えを巡らせます。
図の下に説明が続きます。
先にのべた京屋議員の一般質問の小学校の再編の問題は、「プラスとマイナスの側面を考える」ことで問題の本質に迫っています。それができたのは議論の前提を、プラスとマイナスの側面がバッティングしている状態として捉えたからです。(相反する制約条件)
学童数が減少すれば →小中学校の維持費が増大し →財政を圧迫することいなる。(悪循環のサイクル、財政の制約)
すると、「福祉サービスの向上」というプラスの方向のなかで、「小中学校の再編」という地域住民のマイナスとなる方向が互いにバッティングする。(相反する制約条件)
議論のポイントは上図↑↑で言えば、「福祉サービスの維持」と「財政の維持」という相反することのどちらかを、町民として選択しないといけない。
プラスとマイナスの側面で考えるべき他の事例
今回の議会の一般質問でも、プラスとマイナスの側面から議論を深めていくべきテーマはたくさんありました。実際にはそうなっていません。
事例として次のようなものがあります。
ある議員は、上水道の老朽化を取り上げ前倒しを主張しました。この場合、財政に一定の制約条件があるため、上水道の更新を前倒しすればほかの福祉サービスを削るとかの選択の議論が必要ですが、それがありませんでした。
オーバーツーリズムを取り上げ、どこまで観光客を増やすんだとマイナス面だけを町長に迫る議員もいました。観光の経済がこのまちを支えるプラスのことも考えて、どうバランスをとっていくかという議論がありませんでした。
気候変動と異常気象を踏まえて農業基盤の改良の長期的な実行を訴える議員もいました。このとき、財政の制約とか農業者減・耕作面積減をどう考えるかの話はありませんでした。
このように一面的な質問では、忘れた頃にまた別の議員が同じ質問を繰り返すことになり、町政が前に進みにくくなるでしょう。
まとめ
今回は、人口、経済、福祉、そして財政のいずれかをプラス方向に改善したい場合、他の要素に与えるマイナスの影響にも目を向ける必要があるとお伝えしました。これらの要素が競合している場合、それを克服することを考えないと、議論が堂々巡りとなり、まちづくりが進化しません。
次回は、人口、経済、福祉、そして財政をそれぞれプラス方向とマイナス方向に動かす要因に分解し、より広い枠組みで問題を議論する事例をお伝えします。これによって、例えば町内経済の活性化計画などがうまく行かない要因に備えることができます。
今回はここまでです。
2024-9-21 Noriaki Gentsu @ NorthQuest(ノース・クエスト)・・Quest=探求する
2024-9-23 一部を追記
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