あらすじ
美瑛の観光を基幹産業として税金を投入したこれまでの政策は、経済波及や競争戦略の面から誤まっているとの思いから、たびたびブログで指摘してきた。丘めぐりと青い池を中核とした観光の収益構造そのものが、競合の近隣市町村に対する”弱み”となっている。「美瑛選果」や「四季彩の丘」という6次産業の成功例(”強み”)を横展開すべきだと。担い手は、民間の「まちづくり株式会社」で、戦略は「雇用を含む付加価値の増大」、手法は「選択と集中による投資」だと。
まちづくりの思想に学ぶ
テレビドラマ「北の国」ブームによって地域のブランドが上位になったけれど、まちなかの衰退に悩んだ富良野の商店街のひとたちが立ち上がったのが10年前だと聞く。
いまや「フラノマルシェの奇跡」と言われ、経済産業省をはじめまちづくり関係者の教科書のように扱われている。私は、美瑛町の「美瑛選果」や「四季彩の丘」も成功例、フラノマルシェとの違いは何かとの思いから、調べることにした。フラノマルシェのHP
そして、「観光をまちなかに取りいれる知恵がなかった」、「まちづくりにビジネスとして取り込まないとうまくいかない」と語った西本伸顕 氏(ふらのまちづくり株式会社)の言葉にいまの美瑛を重ねて、深く思うところがあった。
以下、西本氏の講演(2016)からポイントを抜粋した。全文はこちら参照
ドラマ「北の国から」に威光が衰えたものの、地域ブランド調査で 2014 年には全国 6 位と 10 年連続で上位に入っております。
しかしながら、それでも実際にまちが豊かになっているわけではありません。ロケ地を車で訪れて去ってしまう通過型観光が大半で、観光客はまちには立ち寄りません。それも当然で、観光客が立ち寄る施設がなく寄る必然性がなかったのです。これは「観光をまちなかに取り入れる知恵」がなかったといえます。
これらの議論で一番大切だと考えたのは、「経済を再生する」ということです。イベントで一過性の賑わいを作っても地域再生とは言えず、まちづくりの最終目標は「事起こし」を地域経済の底上げにつなげることです。いかに「稼ぐエンジン」を作るかということです。「どんないい事でも経済性が伴わないといつか破綻する。まちづくりをビジネスとして取り込まないとうまくいかない」ということです。これにきちんと取り組んでいるところが実際に成功事例になっていると思います。
そして実行主体としては、半公的組織であるまちづくり会社しかないと思います。ビジネスとしてお金を稼ぐという観点でやる場合、行政はノウハウをもっておりませんので、やはり民間主導のほうが適しています。
フラノマルシェで得られた利益をまちづくりに再投資こうして収入を得て利益を生み、まちづくりの原資にしていきます。「フラノマルシェ」の最終形はそこでお金を儲けることではなく理想的なまちを作るための「種銭」で、実は去年完成した「ネーブルタウン」が我々の本丸事業でした。どんなまちにするか理想の絵を描いて、それに近づけるために、お金を稼ぐためのマルシェから始めたのであり、マルシェが目的事業だったわけではないのです。
経営の手法に学ぶ
将来のまち全体の計画(ルーバンフラノ構想ー2001年)を最終目標とし、その起点としてフラノマルシェを位置付けた。
計画は、行政やコンサルに頼らず商店街の人々が、次世代に対する責任という自覚を持った。そのうえで、市民の投資や、銀行を巻き込んで資金を自己調達し、インフラ整備に行政や国の補助金をうまく活用した。ーマルシェ事業で受けた補助金総額は8億1706万円と少ない・・「フラノマルシェはまちをどうかえたか」による
地元産品にこだわり、投資に対して利益を生み、それを次の投資に回すという経営の基本に徹した。ーマルシェ事業の経済波及効果(2010-2016年)は直接効果で65億円、総合効果で113億円と突出した域内効果をうんだ ーふらのまちづくり株式会社プレスリリース
まとめ
政府の統計(e-Stat)の 「住民基本台帳人口移動報告」の2014-2018年の期間でみた富良野市の人口流出は止まっていない。だが、まちなかを再生し継続的に「稼ぐエンジン」をつくった仕事のしかたは私たちも見習うべきだとおもう。
Noriaki Gentsu @NorthQuest
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