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  • 執筆者の写真NorthQuest |びえい未来ネット

(No.112)戦略なき計画は困る!|第6次総合計画に期待する-(2)

戦略のないまちづくりは、海図のない航海のようなもの。コクピットの計器類があっても、目的地への飛行ルートのプログラムがないようなもの。いま策定中の総合計画にはその懸念があります。


Fig-0
毎年100億円以上の予算を動かす巨大な行政組織が、町民の心配する(最もヤバい)まちの存続に立ち向かう見識と基本戦略なしに、こんご10年の最上位計画を検討している現実は困ったものです。

 

このまちのリスクを知る

最新の調査データから、このままでは経済が持たなくなるのは明らか。ひいては財政も町民の生活基盤も持たなくなる悪循環に陥るリスクがはっきりしました。


つぎのデータ(図1)に表れています。

  1. 美瑛町の地域経済・産業構造分析のデータから「町内産業のひび割れ分析」(2021年)を引用します。60歳以上の経営者の事業継承に着目した調査につき、およそ20年後の状態をあらわしていると考えられます。

  2. 2021年度の町内生産額327億円が、将来的(ここでは20年後とします)に事業継承ができなければ165億円が消失し、生産額が162億円になると推定しています。(このうち最大産業の商業は132億円のうち98億円が消失するとのこと)

  3. 総合計画の期間となる10年後には、約80億円が消失し、約250億円になると推定されます。

注)経済分析では、売上高も生産額も意味は同じで、材料などの原価と、人件費・利益などの付加価値の合算となります。

最大の

Fig-1
図1ー美瑛町の地域経済・産業構造分析のデータから「町内産業のひび割れ分析」(2021年)から引用


 

このまちのリスクに向き合う、戦略と戦略目標を打ち立てる

戦略とは直面する最大の課題に向き合う姿勢を示すものです。


町政の最上位計画ともなればそこに向き合うべきなのに、策定中の体系からすっぽり抜けています。では、課題にどのように向き合うべきか図2を使って具体的に論じます。

  1. 持続的なまちづくりの点で、町内生産力が50%減少することは(最もヤバい)最大のリスクとなります。よって生産力の減少を抑制する戦略をとるのが、合理的です。

  2. 戦略はシンプルに、「既存産業の生産力低下」を「新規産業の生産力増強」で補うのが自然です。具体的には、10年後の生産力の低下を半分に圧縮し、その結果をみて20年後に均衡を目指す考え方があります。

すると次のような戦略と戦略目標を組み立てることができます。

戦略:
『新規産業の生産力の増強により、既存産業の生産力低下を補い、持続的なまちづくりを実現する』

戦略目標:
『今後10年間で新規産業の生産力を、2021年比で40億円増強する』

これは現状の生産額327億円に対し、年換算で1.2%(4億円)の割合で新規産業を成長させることに相当します。
Fig-1
図2-戦略として 『新規産業の生産力の増強により、既存産業の生産力低下を補い、持続的なまちづくりを実現する』とした場合の、戦略目標(数値)をあらわしたもの


 

戦略目標に直結する重点施策を求める

つぎに、戦略目標(新規産業の生産力を10年間で40億円、年換算で4億円増強する=KGI)の裏付けとなる重点施策を導きます。

  1. 下図のチャートは、生産力を高めるためのシステム思考を用いたループ図です。このまちの持続性のボトルネックー1が産業のひび割れ、ボトルネックー2はその対策を賄う資金を生み出す財政力となります。成果指標は、新規産業による生産力増です。

  2. 事業継承を促進することで産業のひび割れが減れば、その分を生産力のアップとカウントできます。そのための主なリソースは移住定住人口です。

  3. 6次産業の起業によって成功した事業が安定成長したときの生産販売額は生産力のアップとカウントできます。そのための主なリソースは移住定住人口です。(なお、6次産業の起業が上記の事業継承と結び付く場合も考えられます。)

  4. 緑色で示した、移住定住人口による事業継承と6次産業の起業の重点施策によって、生産販売の増加が4億円になるかどうかです。

  5. 緑色で示した新規の生産販売の増加のために、赤字で示した投資を行います。初期の投資額は年間4億円より多いかもしれません。移住定住人口による数多くのベンチャー事業の発掘・考案・育成が必要になると思います。あるいは付加価値が低いとのデータがある農業部門から、農協の出資による6次産業の事業展開も考えられます。

  6. 最後に、財政の見直しによって新規事業に対する年間数億円の投資資金額を捻出できるか、そのため既存産業に対する補助金をどこまで合理化できるかのせめぎ合いが、課題となります。そう言ったこまかい内容は毎年の財政運営基本計画には表れていません。というかここで言う基本戦略がないのに、毎年の財政運営基本計画がつくれること自体がおかしいのです。

Fig-3
図3-戦略:システム思考を使った因果関係ループ図。持続性のボトルネックー1に作用する重点施策を緑色で、それを担保する資金投資をピンク色で、その資金を確保する財政力をボトルネックー2であらわしています。


 

まとめ

  1. 第3回まちづくり委員会で公表された第6次総合計画の総論と基本構想は、上記の戦略、戦略目標および目標、その実現のための重点施策、それを担保する財政力の見通しがありません。これでは未来につなぐまちづくりは難しいと思います。

  2. この会議では、過去10年間の事業を各課で評価して向こう10年の基本施策を12月までかけて検討中とのこと。毎年100億円以上の予算を動かす巨大な行政組織が、町民の心配する(最もヤバい)まちの存続に立ち向かう見識と基本戦略なしに、こんご10年の最上位計画を検討している現実は困ったものです。

  3. 総合計画の総論で、「まちの持続戦略」「重点施策」「重点施策の投資財源」「財政の持続性」を盛り込むべきと考えます。

2022-11-17 Noriaki Gentsu @NorthQuest


 

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