ブログ(No.129)でレポートした将来負担で財政について掘り下げます。まちづくりのリーダーを目指すひとは、事業を行う財源をどこからもってくるかといった知識も必要となります。
(テーマ)将来負担と将来への投資は両立できるか?
令和5年の財政運営計画は、令和4年から令和10年にかけ町債が33.8億円減、基金が11.8億円減と計画しています →関連:ブログ(N0.127)
借金を返済より低く抑える戦略 →将来負担には有利
将来負担比率の推定がない(問題)
財政健全化判断比率の縛りで大型事業の借入の余裕が少ない(問題)
他方、(No.129)の研究レポートにあるように、5年で60億円ほどの大型の起債を行っても最終的に将来負担比率を低く押さえた自治体があります
このレポートのテーマは、「将来負担を悪化させずに大型の事業のための借金ができる条件」をシミュレーションで求めることです。
起点となるデータの表を↓↓再掲
将来負担のネックとなる公営企業と退職金について今回は調査データのみ末尾に掲載
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将来負担を悪化させずに大型の事業に投資できるか?
下の表↓↓は2022年の将来負担のデータをもとにつぎのシミュレーションを行いました。
単位が(千円)であることに注意。表の下に続く
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条件1 追加で10億円を借入する(返済期間30年)
①地方債残高がその分増える →⑧国の補てん見込み(70%分とする)が増える →⑧の増えた分を30年で割って(D)に入れる →結果1を見る →将来負担比率が34%に上がる
条件2 条件1の実施のあとで、借入の30%分を基金に積立てる
⑥基金がその分増える →結果2を見る →将来負担比率が28.1%に下がる
(D)が増えた分だけ分母が減るため、将来負担比率は28.0%から28.1%に微増
結論
新たに借入れると同時に、後年に町が負担すべき金額(約30%)を⑥基金として積立てれば、将来負担をもとのレベルに維持することができる。⑦特定歳入でもよい
ここで積み立てた基金は維持し、返済に見合った分だけ⑧とともに取り崩します。
※(説明を省略するが)この条件で借金したものを返済するときは、基金と国の補てん見込みを返済に見合った分だけ取り崩すことで、将来負担比率はもとの28.0%に戻る
実質公債費比率を悪化させずに大型の事業に投資できるか?
下の表↓↓は2021年の将来負担のデータです。※2022年の財政状況資料集は2024/3まで得られないため
これをもとにある条件を加えて実質公債費比率12%の変化をみることで、テーマの答えを求めます。説明は表の下に。単位が(千円)であることに注意。
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条件1 新規の借入によって年間の元本返済(17.3億円)が5億円増えた
元利償還金(A)がその分増える →(A)の増えた分の70%を(D)に入れる →結果1を見る →実質公債費率が16.36%に上がる
条件2 条件1の実施のあとで、特定財源を適切に増やす
特定財源の額(B)を借入額の30%だけ増やす →結果2を見る →実質公債費比率は13.28%と元の比率12.39%に近づく
結論
新たな借入で返済の公債費が増えても、特定財源を適切に増やすことで実質公債費比率をもとのレベルに維持することができる
この特定財源は一時的なものでなく継続して確保が必要です。
財政の戦略の補強
以上の結果から財政の戦略のあり方として次のようなことが考えられる。
借入額を返済額以下に抑える現行の方針は維持する
大型の借入が必要なときは、将来負担比率の維持のための基金積み増し、かつ実質公債費比率の維持のための特定財源の積み増しを行う
上記2を計画的に行うため、財政運営計画は新規の借入と財源をセットにして、将来負担比率の推計の精度を上げる
将来負担比率における特定歳入の調査
図1↑↑において(A)-(B)将来負担比率の分子が多いほど、積立不足が多い状態です。将来の世代は残りのローンの支払いだけでなく、前の世代の積立不足も補わないといけない不公平な状態です。
将来負担について次のことが分かっています。
特定歳入には住宅の家賃などの使用料や寄付金が充当可能です
わが町の町営住宅の約6000万円がこれに相当します。(R5財政運営計画8ページ)
下表↓↓から、将来負担比率の低い町と特定歳入が多い町は相関があります。(図1↑↑にデータあり)
広報で町営住宅の建設費用は入居者の負担を原則とし実質的な町の負担はゼロと明記している町があります。(写真)
わが町は特定歳入が安定的に確保できるまでは、備荒資金の一部を取崩して減債基金として積立てることが考えられます。
わが町の基金の内訳は多様で返済のために取崩せないものもあります。また他の町より返済のための減債資金の割合が少ないようです。
実質公債費比率における特定財源の実現性
実質公債費比率は、毎年の借金(町債)の返済のために家計(一般会計)から持ち出す度合いが多いほど、比率が高くなりつぎの借入に制限がかかるようにつくられています。
このことを3町の比較をしながらその意味を確かめていきます。下の表↓↓
その年の返済額は(A)
その年に国から補てんされる額は(D)
特定財源(B)は自主財源(※後述)で賄います
分子(A-B-D)の額が多いほど一般会計を削って返済を賄います。つまり(B)が少ない分、一般会計から持ち出しが多い →家計が苦しい
以上から、わが町は特定財源(B)を増やすことが課題となります。
分子(A-B-D)が他の町より多いから
大きな借金に備えて比率を一定に保つ手段が要るから
つぎに特定財源(B)を増やすための自主財源について調べます
特定財源は次の表↓↓の自主財源(※)のうち③使用料や⑥寄付金を充てることができます (特定歳入も同じ)
※歳入は、自主財源と依存財源(町債、交付税、国・道支出金)からなります。自主財源が増えれば交付税を減らされますが、財政の自由度は増します。例えば、自主財源は繰越と繰入と使途が自由なので、貯めておいて分子(A-B-D)の足しにして家計(一般財源)の持ち出しを減らす効果があります。
上の表↑↑に関連して、議会報の決算説明(リンク)で自主財源にハイライトしている自治体があります。ふるさと納税が急増していると見受けます。
下の表↓↓は、自主財源を増やして繰入と繰越を大きく動かしている自治体(上の表↑↑)は積立も潤沢にできているようです。(繰り出し金は病院などの公営企業の補てんに)
まとめ
このレポートをまとめて感じたことは、自主財源と基金積み立てに着目した財政運営(計画)の必要性です。
新規に起債するときは、見合った減債基金を連動させるルールが必要です。
加えて、自主財源、減債基金、特定歳入および特定財源を増強するための、総合的な議論が必要です →備荒資金の部分的な活用を含む
上記2は、歳入は使用料値上げやふるさと納税など自主財源の増強であり、歳出は基金積み上げや繰越額を先に枠取りして足りない分をコストカットで補うなどのメリハリのある議論です
上記1.2.3.のエッセンスを広報や議会報で町民に伝えている自治体があります
将来負担のうち公営企業と退職金の返済財源(国の補てん、基金、後年の町の負担)はわたしにとってまだ不明の状態です →公営企業と退職金の調査データのみ下↓↓に記載
将来負担の退職金の調査データ(分析の途中です。今回は説明を省略)
図1↑↑の(A)将来負担のうち、退職金の見込みが、他の町に比べて多いのはなぜか考えるための調査データとなります。下の表↓↓
将来負担の公営企業の調査データ(分析の途中です。今回は説明を省略)
図1↑↑の(A)将来負担のうち、公営企業に関するものが他の町より多いのはなぜか考えるための調査データとなります。下の表↓↓
今回はここまでです。これからまちづくりのリーダーを目指す皆さんはどう思われますか?
2024-1-14 Noriaki Gentsu @ NorthQuest
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